2011年02月10日

愛と哀しみの果て

2011年2月10日(木)

昨夜,BShiで放映していた「愛と哀しみの果て」を観た。
観た,とは言っても,途中用事をしながらだったので,見落としたところもあるが。

初見である。
公開はいつかな,と思って調べると1985年。
この映画のことは知っていたし,当時評判になっていたけど,食指が動かなかったんだなあ。
愛とナントカ・・・というドラマがやたら多い時代だった。
映画館には女性客を呼び込め,という時代だったのだ。
そして今はあんまりやらない邦題をつけるのが普通だったと思う。とくに恋愛ドラマには。

愛と哀しみのボレロ
愛と青春の旅立ち
愛と追憶の日々・・・

といった具合に。

この中で私が当時観たのは「愛と哀しみのボレロ」だけだな。

当時はまっていたのはクリント・イーストウッドだった。
「ダーティーハリー4」ではまって,「タイトロープ」「ペイルライダー」といったところをロードショーで観,テレビで放映する「ダーティーハリー」シリーズ,「ガントレット」,「アウトロー」,「アルカトラズからの脱出」,「ブロンコ・ビリー」などを見まくっていた。
そして,どうしても「センチメンタルアドベンチャー」を見たくて,当時の関西の情報誌「プレイガイドジャーナル」で,それが上映されている映画館を見つけて見に行った。
それは新世界のトビタだった。
今でもあるのかなあ,もうないかなあ。
今は観光名所の新世界も,80年代当時は,若い(←当時は)女がひとりで歩く場所ではなかったよ。
入った映画館はガラガラで,予告上映は,アメリカのポルノ映画(この言い方も,古いか)ばかり。
えええええっと思っていると,こんなにガラガラなのに,おっちゃんが隣の席に座ろうと思ってやってくる。また,ええええっと思っていると,サラリーマン風の男性が,あいだに座ってくれて,ほっとした。
映画はやさぐれ男のナニワブシ映画だったので,私の好みではあったが,緊張して,イマイチ入り込めなかった。

と,本題の前の話が長くなった。

というわけで,愛と・・・系の映画はあまり見なかったのだ。
くわえてこの映画の原作はカーレン・ブリクセンというデンマークの女性作家で,大学で短編を読まされたが,あまり好きになれなかった,ということもある。映画の原作の翻訳『アフリカの日々』も買ったが読んでいない。

そういう記憶の系列のなかに位置する映画を,私は初めて観た。

なかなかおもしろかった。
メリル・ストリープは,今は肝っ玉お母ちゃん的な役が多いけれど,当時はどっちかというとエキセントリックな役が多かった。
この映画では,男性中心の世界で自立的な志向性を持つ,気の強い,甘え下手な女性を演じている。
その相手役はロバート・レッドフォード。
美男俳優としての期限ぎりぎりというとこかな。
あんまり好みではない。「明日に向かって撃て!」だって,「スティング」だって,映画は大好きだが,断然ポール・ニューマン贔屓である。

映画は,英国による植民地化の途上にあるケニアを舞台にした「風と共に去りぬ」というところ。
土地をめぐる状況が変化していくなかで,気の強いヒロインが女実業家として奮闘するところが似ている。重要な脇役と主人公のあいだに徐々に絆が築かれていくところも似ている。「風と共に去りぬ」ではスカーレットの乳母のマミーと,スカーレットの夫,レット・バトラーのあいだの関係,本作ではヒロインと召使頭の関係である。
アフリカという「未開」の地を西洋文化によって啓蒙しようとするヒロインと,無文字文化の知恵を示唆するポストモダンな相手役,という構図であり,その構図の裏の構図は,自由を尊ぶ男と,相手との体験の共有を(ひそかに)望む女,というもの。女が隠していた願いを明らかにすると男は

必要と欲望を混同してる!

とかなんとか言うのだよね。
こういうの,理論武装って言うんでしょうか。

だけど,男はもう一度戻ってくる。
自由と孤独を守ろうとする人生態度を揺さぶられた,と告白するために。

二人のあいだに新しい関係がひらかれるか,という期待が高まったところで,男の死が告げられる。
そういう大メロドラマなところは,私の好みにあいません。

と,最後はちょっと文句を言ったが,全体としておもしろかった。
それから,衣装デザインもいい。
アカデミーのデザイン賞はとっていないようだが,ヒロインの衣装が素敵だ。
1910年代から30年代にかけてスカートの丈が短くなって,髪形もシニヨンから短い断髪になっていく。そういう歴史を見ることもできた。
男に伍する気丈な女性らしく,男の着る乗馬服やサファリスーツを着こなしているのもいいし,アフリカのエスニック風味をきかせたアレンジ(たとえばアフリカの布を片方の肩にかけてベルトを締めるという,アシンメトリーな着こなし)もいい。デニスの親友,バークレーの恋人のアフリカ女性がまた格別美しく,チョコレート色の肌に原色の衣装が似合っていた。
ヒロインの後半の生活で着ていたパジャマもかっこよかったな。
と,どれもよかったけど,コーヒー農園経営が軌道にのってきたころの,くるぶしよりちょっと短い丈の,白いストンとしたワンピースがとくによかった。










タグ :ブリクセン

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Posted by ボブ・マリ at 12:39│Comments(0)映画
 
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