2011年06月23日

マイ・バック・ページ

2011年6月23日(木)

昨夜,「マイ・バック・ページ」を見た。
なんとも複雑な気持ちになった。

原作,読んでないけど,当然のことながら原作=映画ではない。
75年生まれの若い監督は,原作に登場する悪魔的なヒーローなりそこねの片桐に,感情移入したんだろうなあ。
だから,この映画は,記者・沢田よりも,片桐に比重がかかりがち。原作者はどんな思いでこの映画を眺めるのかな,とまあ,原作者と監督のちょうど真ん中くらいの世代である私は,思った。

映画としては,松山ケンイチのうまさが光る。シンサヨクの霊がとりついているかのようで。
松山の演じる片桐にみいられる記者・沢田役の妻夫木聡もいい。
あと,ちょっとびっくりしたのは,忽那汐里。”アイドル”というカテゴリーの人なのかな。でもアイドルにあるまじき低音ボイス。表情の演技の的確さ。
そしてこの人の演じるグラビアモデルは,状況に巻き込まれていく沢田の近いところにいて,冷静に物事を見て表現する役回りになっている。いま映画を見る観客の視点にもっとも近いのかも。

山下監督の作品のレギュラー陣らしい脇の人たちも堅実。
とくに,沢田の先輩記者・中平を演じる古舘寛治がよかった。
あと,ワンシーンだけなのに強烈な印象を残す三浦友和も。青春のひりひりした瀬戸際を歩く主人公二人とは対照的に,社会というもの,オトナ世界というものを体現する存在として出てくる。

山下監督の映画を見るのは「天然コケッコー」に続いて2作目。
「天然コケッコー」は,渡辺あやの脚本のよさもあって,田舎の女子高校生の心情をよく描いていたと思う。
この映画は,印象がまただいぶちがって,なんというか,映画の間のとりかたが,昔ふうで,粘着的だ。劇伴音楽を多用していないことも,それを強化している。
この粘着質,毒のように効いてくる。
次回作が見たくなる。






同じカテゴリー(映画)の記事
レ・ミゼラブル
レ・ミゼラブル(2013-02-11 19:26)

天のしずく
天のしずく(2013-01-26 13:05)

イノさんのトランク
イノさんのトランク(2012-12-22 07:57)

黄金を抱いて翔べ
黄金を抱いて翔べ(2012-12-03 07:33)

北のカナリアたち
北のカナリアたち(2012-11-23 20:33)


Posted by ボブ・マリ at 21:56│Comments(0)映画
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。